鈴木光司「エッジ」

エッジ 上エッジ 下




映画でもなんでも「ホラー」は好きじゃないので、「リング」や「らせん」で知られる鈴木光司にも全く興味がなかったのですが、新作「エッジ」は科学的な事象を扱い、「世界を記述する科学に綻びが生じたら、世界も崩壊するのではないか」という怖さを描いた作品だということで興味を持ち、読んでみました。


物語の方は、失踪した人々を捜していくうちに、それらの原因が地球や太陽の活動にあるということが明らかになり、やがては宇宙規模の崩壊へとつながっていくという、予想外に壮大な展開でした。
そこからの脱出の手法は、いかにもSF的だなあと思ったのですが、主人公がたどりついた先が「ははあ、そこにつながるのか」という感じで、作者の想像力に脱帽してしまいました。


読みながら、この作品を映画やドラマにするなら役者はだれかなって考えていたんですが、主人公の栗山冴子は大塚寧々をイメージしました。
その相手役で、不倫関係になる妻子持ちのテレビプロデューサーは、そこまで明確なイメージはなかったんですが、あえて挙げるとすれば阿部寛かなと。
でもその組み合わせは、ほとんど「HERO」じゃないかと、少ししてから気づきました。


主要参考文献に、数学から物理学、量子力学、生物学、地質学、宇宙論など、ワタクシの最近の関心に引っかかりそうな本がずらっと並んでいて、これを見ただけでおもしろそうです。ワタクシが最近読んだサイモン・シンの「フェルマーの最終定理」や「暗号解読」も含まれていますからね。
実際、物語のなかでも、円周率からリーマン予想、物質と反物質、さらにはノーベル賞受賞で話題になった「対称性の破れ」まで取り上げられていて、楽しめました。しかも、それほど専門的なことが書かれているわけではないので、数学や物理が苦手という人でもさらっと読めるかも。