改めて、iPhone≠「ケータイ」ということをはっきりさせた方がいいと思う

はじめに断っておきますが、ワタクシはSPIRAL LIFESCUDELIA ELECTRO、MOTOR WORKS、そしてソロと、ずっと石田ショーキチ(小吉)というアーティストを追い続けてきたし、ライブDVDを観た妻から「歌がヘタ」と言われても「ヘタでもいい、色気があるから」とフォロー(?)してきたし、石田ショーキチというミュージシャンが大好きなわけですよ。


ですから、その石田氏が先日ブログで以下のような記事を書いておられたことにちょっと驚いてしまいましたが、非難する気はさらっさらないので落ち着いて聞いてほしい。


iPhone 3Gの非勧め? | SHOKICHI ISHIDA OFFICIAL WEB SITE | diary


まあ要約すれば、これまでのケータイからiPhoneに機種変したところ、これまでケータイでやってきたあれやこれやがほとんどできなくなってショック! という内容。
こういうのって、iPhoneが発売された当初も、たとえば森公美子が買ったんだけど使い方がわからず解約したい、ていう話があったんだけど(その後使い方がわかったそうですが)、今値下げして売上が伸びてるって言うから、またこういうケースは増えてるんでしょうかね。


それにしても石田氏といえばですよ、かなり早い時期から音楽にコンピュータを活用してきたことで知られているし、スクデリ時代は他の2人がコンピュータに明るくないので自分がほとんどすべてのデータを作っていて、そのためにボーカルやギターに集中できなかったと自ら語っているくらい、コンピュータやMacのことを知り尽くしている、ひいてはAppleのこともよく知っていると、少なくともワタクシはそう認識していたんですよ。


ですから、今回の記事を読んでちょっと意外な感じを受けたのでありますが、その核心は石田氏ものべているように、iPhoneは携帯電話ではない」ということを分かっていないで購入した、という点に尽きると思います。


iPhoneというのは、そもそもその他のいわゆる「ケータイ」とは、全く異なる思想、全く異なる文化の上につくられていると思うんですよ。
最も大きくちがうのは、たとえばWeb。ケータイなら「iモード」とか「EZweb」とか「Yahoo!ケータイ」といった、いわゆる携帯電話専用の「携帯サイト」が中心なわけですが、iPhoneはパソコンで見るサイトと同じものを見ることを前提として、iPhone用の「Safari」(Mac標準のウェブブラウズソフト。Windowsで言うところのIE)が搭載されているわけです。
もちろん、「パソコンと同じサイトを見るっていいながら、Flashが表示できないのは欠陥じゃないのか」っていう意見はよく分かる。ワタクシも、iPod touchが発売されたとき、さっそく店頭で実機をさわってみて、まずやったのがニコニコ動画へのアクセス。見事に表示されなくてガッカリした思い出がありますから、よく分かります。しかし、そこはもう「iPhoneで動画見るならYoutube。ニコ動見たけりゃパソコンで」と割り切るしかない。そして将来のバージョンアップで対応してくれるだろうという淡い期待を持ちながら、wktkして待つしかないんですよ。
「そんなふうに割り切れるのはマカーだけ」と言われたら、返す言葉もないんですが・・・。


もう一つ、ケータイとiPhoneで大きくちがうのはアプリ。ケータイなら「iアプリ」とか「EZアプリ」とか「S!アプリ」があるわけなんですが、当然これはiPhoneには引き継げません。ですから、石田氏のようにケータイのアプリを縦横に使いこなして日常のあれやこれやをやっている人ほど、iPhoneでそれらが使えないってことで困るというのは当然なんですね。
ただしiPhoneでは、iTunes StoreApp Storeに数多くのアプリがあって、石田氏も「最大の特徴」だと言われているように、それこそ種類の豊富さや充実度、検索の簡便さ、使用者の評価やレビューを参考にできる点などは、ケータイアプリとは比べものにならないくらいすばらしいと思うんですよ。無料のものも結構ありますし、探せばいろいろ役立つものがあるんです。
ですから、ケータイアプリの使用頻度の少ない人なら乗り換える価値はあると思いますし、ケータイアプリのヘビーユーザーでも、いわば「スクラップ・アンド・ビルド」する覚悟さえあれば、その先の道はさらに広がるのではないかと思います。


そのほかにも、「カメラがショボい」とか「動画が撮れない」とか「コピペができない」とかいろいろありますが、その辺は先ほどのFlash未対応のように、「こういうもの」として割り切りつつ、今後のバージョンアップ(ハードとソフトの両面での)に期待するしかないですね。
次期OSではコピペには対応するそうですし、技術的にクリアできれば動画撮影などの機能も載せない理由はないと思います。


そういう意味で、iPhoneは「ケータイ」ではないということをはっきりさせておく必要があると思うんですよ。「だれが」はっきりさせなければならないかといえば、それはもちろん「売る側」、この場合、iPhoneを開発し作っているAppleと、日本の携帯電話市場においてiPhoneを扱っているSoftBankということになると思います。
で、AppleiPhoneの「可能性」を示すことで、ケータイとの違いを十分にアピールしていると思うんですよ。マカーとしての贔屓目もあるんだろうけど。CMなんか見ても「こんなことができる」「簡単にできる」ということを非常に魅力的に伝えており、普段ワタクシのApple信者っぷりを冷ややかな目で見ている妻も、あのCMには「へー」とか感心したような声を上げていますから。Appleには、もっともっとiPhoneを使うことで広がる「夢」を語ってほしいと思うわけであります。


問題はSoftBankではないかと。彼らはiPhoneを作っているわけではなく、iPhoneを使おうとする人と実際に対面し、契約(機種変)させる役割を担っているわけです。その場面において、「こんなことができる」という夢を語ることも必要ですが、きちんと「iPhoneは、お客様がこれまで使われていた携帯電話とはちがいます」「○○ができますが、××はできなくなります」ということを、しっかりと説明する必要があると思います。
それを説明すれば、iPhone購入を躊躇する人も増えるでしょう。当然、売上を伸ばそうっていうときに、そういう客を立ち止まらせるようなことは言うべきじゃないという力学が働くことになると思います。
しかし、「iPhone≠ケータイ」ということを曖昧にしたまま売上を伸ばしたところで、「こんなはずじゃなかった」とネガティブキャンペーンをする人が増えては元も子もないわけです。


以上、いろいろ好き勝手なことをのべましたが、ワタクシはiPhoneは持っていません(オイオイ)。
ですが、iPod touchを愛用して、iPhoneiPod touchの共通点と違いについては分かっているつもりですし、雑誌やwebなどで林信行氏や大谷和利氏の解説なども読んで、ワタクシなりに「iPhone≠ケータイ」ということは納得しております。


ちなみに今日になって、石田氏は「iPhoneのお陰で助かった例」を書いておられます。
うちも2歳の息子が泣きじゃくっているとき、iPod touchYoutube上のネコの動画を検索して見せたり、ケータイ(auのINFOBAR2)で撮った息子の動画を見せたりして泣きやませております。


それにしても、石田氏がこれまで、あの長文の日記をケータイで入力してきたってことの方が驚きだっつう話ですよ。
今回の記事も、iPhoneに苦言を呈する記事を、丸一日かけてiPhoneで入力したとか。そこにiPhoneへの愛を見た気がします。