蓮見圭一『水曜の朝、午前三時』

水曜の朝、午前三時 (新潮文庫)

水曜の朝、午前三時 (新潮文庫)


作者のことも作品のことも全く知らなかったのですが、ブックオフでたまたま見かけたタイトルに惹かれて購入(105円の棚だったし)。
なぜ惹かれたかというと、たしかそんなタイトルの曲があったような気がしてなのですが、ワタクシのiTunesライブラリにあったのは


・Up to Wednesday,3p.m. / ROUND TABLE


でした、午前じゃなかった。
いやいや、午前三時もあったはず! と思って探したんだけど


・3 a.m. op / 午前3時のオプ / FLIPPER'S GUITAR (iTunes)


水曜とは関係なかった。
実際には、サイモン&ガーファンクルの同名の曲からとられているそうです。
洋楽を聴かないのでよく知りませんが。


そんな勘違いから、偶然読み始めた作品なんですが、おもしろくてさくっと読んでしまいました。
45歳で癌で亡くなる主人公の女性が、死を目前にして、娘への手紙(録音テープ)で結婚前(後)の恋愛を語る、という構成。
別の人と家庭を持つという結果がわかっているので、恋が燃え上がるほどに「どんな結末を迎えるのか」とハラハラし、グイグイと引き込まれました。


その恋愛の舞台となるのが、1970年の大阪万博
自分の生まれる前の有名な出来事を知るという点では、ちょっと前に読んだ『アポロ13号奇跡の生還』を読んでいるときの感覚に似たものを感じました。


「人類の進歩と調和」をテーマにした万博を舞台にした恋が、「進歩」とも「調和」とも程遠い結末を迎えるところが、なんとも皮肉です。
その裏返しか、結婚後に再会し、その後何度か逢瀬を重ねるところは、言ってみれば不倫なわけですが、読後感としてはさわやかな感じさえします。